水彩で描く折々の花
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水仙:水彩で描く折々の花



水仙はその可憐な姿に似合わずたくましい花だ。特に日本水仙と呼ばれるものは、関東では正月前後に咲き始め、春近くまで延々と咲き続ける。その間、雪に閉じ込められても、風に吹き揺るがされても、へこたれることなく頭を持ち上げ、眺め入る人々に何かを訴えかけるかのようだ。

筆者の旧宅の庭にも水仙が植えてあるが、これはもうかれこれ20年間も咲き続けている。しかも10年近くも前に引越しをしてからは、全く手入れをしていないのに、枯れることがないのである。

柳宗民は、水仙が日本にやってきたのは室町時代のことで、中国の沿岸からこぼれ落ちた球根が黒潮に乗って日本にたどり着き、そこで野生化したのであろうと推測している。そんな出自があることからも、この花がいかにたくましいか、わけが納得されようというものである。

ギリシャ神話にその名の由来を持つことからわかるように、地中海地域が原産地であったらしい。ナルシスのイメージが余りに強烈なので、うぬぼれとか自己愛とかが花言葉になっているが、日本人の感覚からすれば、清楚のイメージのほうが強い。

この絵は日本水仙を描いたものだ。花びらが6枚あるように見えるが、そのうち外側の3枚は萼で、本当の花弁は内側の3枚だけである。真ん中にあるのを副花冠といい、これがラッパのように飛び出たものをラッパ水仙という。

日本人は古来、水仙という言葉自体は漢籍を通じて知っていたであろうが、花の来歴は新しいので、詩歌に歌うということはなかった。歌われるようになるのは近世以降のことである。

ここでは、与謝野晶子の水仙を歌った歌を紹介しておこう。

  白鳥が生みたるもののここちして朝夕めづる水仙の花








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