WATERCOLOR
 −水彩画:画材・技法・アーチスト
HOME | 壺齋閑話東京を描く西洋美術日本美術プロフィール掲示板


     

構図の基本:絵は作るもの

 
構図とは、図つまり画面を構成することです。構成することは創造することにつながります。油彩や日本画を含め、絵というものは、創造の産物であることを忘れないでください。初心者はとかく写生にこだわり、目に見えるがまま忠実に表現しようとしますが、それは多くの場合、絵にとってはマイナスの効果しかもたらしません。自然の眺めを写生している場合でも、対象を見えるとおりに描いてはならないのです。見えるとおりではなく、自分が表現したいとおりに描く、というのが、美術的マインドのありようです。



これは、横浜の山手通りにたっているブラフ234番館という建物です。初夏の日を浴びているこの建物には独特の魅力があります。そこでこれをモチーフにして写生をしたいと考えます。ところが御覧のように、建物の前面には大きな木が日本もはえ、建物を遮っています。また、建物の周りの緑の部分も、建物のシルエットを曖昧にしています。その上、建物には余計な影がかざしていて、建物の明るい雰囲気をそこなっています。

この写真のとおりに、目に見えるがままに描いたとしたら、その絵の印象はかなり制約を感じさせるものになるでしょう。そこで、思い切って、邪魔な要素を削り、雰囲気を盛り立てるような要素を付け加え、見られる絵に仕立て直します。つまり絵を作るのです。



これは、絵作りの結果得られた構図です。建物前面の二本の木を省いて、建物の全景がむきだしになるように作り直します。ただ樹木の雰囲気は残したいので、その位置を変えます。そうすることで、建物と樹木双方の魅力を生かすことができます。また、自然だけでは殺風景ですので、人物を入れることにします。画家の中には、人物を入れず、自然と建物だけに焦点をあてるような人もいますが、その辺は、画家の主義にかかわることかもしれません。

要するにここで言いたいことは、構図は見えるとおりに描くことではなく、見えるものをもとにしながらも、そこに創造の手を加える必要があるということです。絵は作るものだということを、忘れないでください。

  
HOME 構図次へ





HOME水彩紙絵の具筆と小物素描色彩混色彩色
アーチスト人物画風景画東京を描く