水彩で描く折々の花
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ヒガンバナ(彼岸花:曼珠沙華):花の水彩画



いつか大月付近の丸山というところを散策した折に、山の麓を流れる清流沿いに彼岸花が真っ赤に咲き並んでいたことを思い出す。あれは確か秋の彼岸の頃だったから、花はその名を裏切らずに咲いていたわけである。細長くのびた茎の先に、千々に乱れて咲く花の様子は、何とも不思議な気分に人を誘う。

彼岸花はまた曼珠沙華ともいう。法華経の中に出てくる尊い花のことだ。だがその名とは裏腹に毒があるので気をつけたほうがよい。誤って口にすると、神経が犯されて、最悪の場合には死ぬこともあるそうだ。

この花はユリの仲間で、日本には中国から伝わったらしい。種からは増えることがないので、鱗茎を株分けして増やす。日本に自生する彼岸花はすべて共通の祖先から枝分かれしたものだそうだ。

万葉集の中に「いちし」を歌ったものがあるが、それがヒガンバナではないかと思われている。

  道の辺のいちしの花のいちしろく人皆知りぬ我が恋妻は

「いちし」に「いちしろく」をかけているが、花が白いという意味ではない。「くっきりと」咲くという意味である。

北原白秋は「曼珠沙華」という題で詩を作った。

  GONSHAN. GONSHAN. 何処へゆく。      
  赤い御墓の曼珠沙華、 
  曼珠沙華、 
  けふも手折りに来たわいな。

曼珠沙華はこの詩にあるように、墓場に植えられることも多かったらしい。その猛毒がモグラや虫の類を遠ざけてくれるからだろう。








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