水彩で描く折々の花
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白木蓮:水彩で描く折々の花



筆者の家の庭には白木蓮の木が一本植わっていて、毎年3月には白くて大きな花を枝いっぱいに咲かす。梅に続いて春を知らせる花だ。香りも高い。ただ梅ほど上品ではなく、白粉のようなやや刺激のある匂いである。

白木蓮の仲間に紫木蓮がある。単に木蓮といえばそちらのほうをさす。白地に紅または薄紫の上塗りを施したような色である。白木蓮が高木なのに対し、紫木蓮は低木である。このほか辛夷(こぶし)は白木蓮とよく似ているが、花の形が一回り以上も小さい。

木蓮はまた、木蘭と呼ばれることがある。花の形が蘭に似ているからだが、今ではもっぱら木蓮という呼称が流通している。蘭よりは蓮の形に近いからというが、筆者などは、音の響きと花の形状どちらからしても、木蘭のほうが当を得ていると思う。

木蓮を歌ったものに、与謝野晶子の次の歌がある。

  木蓮の散りて干潟の貝めける 林のみちの夕月夜かな

干潟の貝とは卓抜な比喩だ。だが落下した木蓮にはあまり風情はない。落ちるときも椿のように、ボタッと落ちる。落ちた花は地面にへばりついて、きたならしい色になる。そんなものに与謝野晶子が何故風情を感じたのか。むしろ枝に高く咲いているところを歌ったほうが破綻がなかったとも思われる。

古歌に木蓮を歌ったものは、いまのところ筆者は目にしたことがない。








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