水彩で描く折々の花
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オダマキ(苧環):花の水彩画



日本に自生するミヤマオダマキは、高山性の山野草である。初夏から夏にかけて、関東地方以北の山に登ると、薄紫色の花弁を下に向けた姿勢で、可憐に咲いているのをあちこちで目にする。

山野のみならず、普通の家の庭でも栽培できる。筆者の亡くなった母親はこの花が好きで、自分で育てては毎年花の咲くのを楽しんでいた。二年草なので、種を秋にまくと、開花は翌々年の初夏以降になる。高山性植物にかかわらず、比較的丈夫らしいので、激しい暑さに気を付けていれば、枯れることはないようだ。

苧環といえば、静御前の歌が有名だ。「しづやしづ 賎(しづ)のおだまき 繰り返し 昔を今に なすよしもがな」というものだが、実はこれには本歌がある。伊勢物語にある次の歌である。「いにしへのしづのをだまき繰りかへし 昔を今になすよしもがな」

これは数年ぶりに昔の女にあった男が、よりを戻したいと持ちかけている歌である。これに対して、静御前のほうは、死んだ義経をしのんだものだ。

これらに出てくる苧環は花のことではない。倭文(しづ)という布を織るための機織道具の一つだ。これを用いて糸を繰り、それを機にまわして布を織るのである。倭文を折るための道具であるから、つねに「しづの苧環」というふうに、成句として用いられた。

この苧環に花の形が似ているために、この花も苧環という名で呼ばれるようになった。

花言葉には、勝利への決意、捨てられた恋人といったものがあるが、これは日本のミヤマオダマキというよりは、西洋オダマキに対して付けられたものだ。

絵にある花は、礼文島の山で見かけたものを写真に撮り、それをもとに後日描いた。紫色の花弁に見えるものは萼で、本当の花弁はその内側にある筒状のものだ。








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