水彩紙の原料と製法



 原料

おおよそあらゆる種類の植物繊維は紙の原料になりえますが、
現在水彩紙の原料として用いられているのはコットン、リネン、パルプです。

綿の種から抽出される繊維はコットンラグと呼ばれ、長くて丈夫な性質を持っています。
この繊維は綿糸や衣料の原料にもなるくらいですが、
水彩紙の原料としても非常にすぐれた性質を有しています。
すなわち、長くて丈夫な繊維を圧縮して紙にすることから
丈夫でかつ適度に絵の具を吸い込む紙ができるわけです。
水のコントロールが命である水彩画にとっては理想的な紙といえます。

リネン(亜麻)の繊維はコットンよりさらに長くかつ頑丈です。
シーツや衣料として、綿よりもごわごわとした感触を与えることから連想されるように
水彩紙としてもコットンよりハードな紙ができあがります。

木材パルプは廉価なことが長所ですが、水彩紙としてはあまりすすめられません。
木材の中でも、松や杉の繊維は比較的長いので、他の木材パルプに比べれば
やや使い勝手のよい水彩紙ができるようです。


 製法(紙の漉き方)

紙の製法は大きく手漉き(handmade)と機械漉き(mouldmade)にわかれます。

手漉きは和紙を作るときとおなじように、繊維を溶かし込んだ水の中に
濾過網つきのますを通し、網にすこしづつ繊維を付着させる方法をとります。
また枡の変わりにシリンダー状のものを用い、それに繊維を付着させる方法もあります。

機械漉きは、mouldとよばれるシリンダー状の機械を水にもぐらせ
繊維をまきつけていきます。この方法だと、紙は際限もなく長く作られ、
ロール状になります。


 酸化防止

水彩画に限らず芸術作品の命は永遠性にあるといえます。
水彩画にとっては、紙の酸化がこのテーマの最大の敵です。
紙が酸化することによって、紙自体はもちろん、顔料もまた色があせていきます。
偉大な作品も、僅かな時の合間に台無しになってしまいかねません。

水彩紙を漉きあげる間には大量の水を必要としますが、
漉く過程の最後の段階では水に炭酸カルシウムを含ませ
これによって漉きあがった紙のpH値がニュートラルに保たれるようにします。
水彩紙にacidfreeという表示があるのは、このような過程を経てつくられていることの表示です。


 サイジング

繊維だけで漉きあげられた紙は、そのままでは水の吸収が強すぎて
絵の具もにじんでしまいがちです。
これを防止するため、和紙ではドーサ引きの処理をしますが
西洋製の紙ではサイジングと呼ばれる処理をします。

サイジングとは紙の内面あるいは表面に動物性のゼラチンを含ませることをいいます。
これによって、紙は程よく水をはじき、彩色のコントロールがしやすくなります。


 紙の肌目

水彩紙は仕上げ方によって、紙の表面の肌及び重さに違いが生じます。

水彩紙の肌には、荒目、中目、細目の3種類があります。
これらは紙のプレスの仕方による相違です。
荒目は漉いたままの状態でプレスをくわえないもの
中目はcold pressともいい、熱を加えないプレス
細目は熱を加えたプレス、つまりアイロンをほどこしたもの

荒目は文字通り紙の表面がざらざらとしているもので、コントロールがむつかしいですが
ドライブラシによるかすれの表現などができます

細目は表面がつるつるとしているので 繊細な表現に向いています

もっとも使いやすいのは中目の紙でしょう


 重さ

水彩紙の中には600グラムをこえる板のような紙もあります。
通常300グラムくらいの紙が標準の厚さとされています。
これより軽い紙は水を含むと波打ち現象が起こるので
水張りによる紙の固定が必要となります






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