WATERCOLOR
 −水彩画:画材・技法・アーチスト
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テーマを絞る:絵のモチーフ

 
絵が表現したいものを、その絵のモチーフといいます。モチーフは複数あってもよいのですが、ただし、どれか中心となるものを決めて、それを中心にモチーフを適度に配置することが肝要です。すべてのモチーフを平等の重さで表現していては、絵に締まりがなくなります。しまりのある絵とは、中心になるモチーフが、絵全体の大黒柱として、画面を安定させるような役割を果たしているものです。大黒柱を中心としたモチーフの配置を、テーマを絞るということができます。

そのように、テーマの絞られた絵は、観客の視線を自然な形でひきつけます。観客の視線はまず、大黒柱のモチーフに向かい、そこから順次ほかのモチーフに流れていきます。その流がスムーズだと、観客は絵を味わったという満足感を得ることができます。モチーフの配置が雑然としていると、観客の視線が定まらず、しかがって強いストレスを与えることになります。そのような絵は、観客の心に印象を残すことができません。



これはこぶしの花をモチーフにした拙作。何枚かの花びらを描いていますが、それらを漫然と並べるのではなく、メリハリのある並べ方にこだわっています。画面中央からやや左手に大きな花びらをおいて、これを全体の大黒柱とします。その大黒柱の周囲に、ほかの花びらをリズムよく配置します。余計な空間を作って、そこに子どもを配したりもしています。

大黒柱は、明暗のコントラストを聞かせて、画面から浮かび上がって見えるように描き、ほかの花びらは、おおかれ少なかれ曖昧に描いています。主要なモチーフ以外の部分は、単純化したり明暗をぼかしたりしたりしていいのです。そうすることで、主役を引き立てることができます。



これはセザンヌの水彩静物画の傑作。この絵の主要なモチーフは、グリーンのメロンとその手前の透明なコップです。セザンヌはこの二つについては非常に丁寧に描く一方、ほかの部分には単純化や曖昧化を施して、主要モチーフが引き立って見えるように工夫しています。

  
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